花を贈る

50代も半ばを過ぎると、できることも限られてくる。
両親を見ていると、つくづくそう思う。

私は40代後半、長年勤務していた専門学校の退職を考え始めていた。
家事をこなしながら、仕事を続けることが難しくなってきていた。

そんな時、たまたま受診した大学病院で昔の同僚と再会した。
彼女は、実習中怪我をして、教師をやめなくてはならない状況に立たされた。
看護師の資格を持ち教師をしていた彼女は、少しゆっくりして経験を活かしながら、講師をして余生をおくりたいと話した。
家の周りに、花を植えたりしたい。
この間、主人とホームセンターへ行ってきたのよと楽しそうに話していた。

彼女は結婚しても子供をもつことなく、看護師、時には教員として働き続けてきた。
真面目でつまづいても自分から逃げることもせず、自分と向き合ってきたようだ。

もう少し頑張ってみようか、彼女と話していてそう思った。

だが、私の状況は、そう容易いものではなかった。
義父が亡くなってまもなく、義母の老いを強く感じた。


「そろそろ良いのではないか」主人が言った。

贅沢しなければ、家族5人なんとかたべていけるじゃないか。
落ち着いたら、毎日ではなくてもパートに出てもいいのだから。

私は、定年まで7年を残し退職した。

ところが、退職後数ヶ月して職場から何度も連絡が来るようになった。
何度も何度も携帯や自宅の電話、FAXで・・・

「私なら、きっぱり断る」
電話で相談した優柔不断な私に彼女は言った。

翌日、元職場へ断りの連絡を入れた。

そして、やっと私にも落ち着いた日々が戻ってきた。

翌年の年末、彼女のご主人から喪中のはがきが届いた。
癌を患っていた彼女は、黙って逝った。言葉も出なかった。

私は、ご主人に宛てて彼女の為、手紙を添え花を贈った。

ご冥福をお祈り申し上げます。
私は、彼女の生真面目で潔さが好きでした。




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